01 ゆき、わたし




昔から、私は雪というものがどうしても好きになれなかった。


生まれ育った町が私をそうさせたのかもしれないし、もしくは私の名前が『雪』だからかもしれない。


私はめったに雪の降らない、冬でも氷点下をきることはまずありえない、極めて暖かい町に生まれた。


そんな暖かい町にも一年に一度くらいは極端に冷え込み、雪が降る日がある。


私はその”雪の降る日”、2月2日の早朝に生まれた。だから『雪』と名付けたそうだ。


何度も言うけど、私は雪が好きではない。


雪が降ると空は白く濁り、町はしん、と静まり返る。


ちりのような白い粉雪が無残に散る様はいつ見てもむごたらしいと思う。


窓のサッシに落ちて、じわりととける雪は、儚いというよりもあまりにもひ弱に見えた。


頬にあたる冷たい感触は冬の終わりの恋と似ている。



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