子様



それは学校での出来事。


いつも通りに家を出て、学校に着く。


早く着いても気にしない。


むしろ、早く着きたいのです。



教室のドアを開けると、ほらね。



窓ぎわの席。少しだけ開かれた窓から入る風になびくカーテン。


やわらかい日差しを受けて眠る王子様。



いつも活発な彼。


でもその寝顔はすごくおだやかで。


ふわふわのねこっけはちょっとした風でも揺れて。



彼は、自分の寝顔を見られているに気づいているのかな?


気づいてるわけないよね。


だって、彼が目を覚ます頃には私はもう教室にはいないんだから。




10分間。


これが、私が彼を所有できる唯一の時間なのです。


でも、それだけでも幸せだから。


眠っている彼。

2人だけの教室。

少しだけ開いた窓。

やわらかい日差し。

ふわふわのねこっけ。

踊るカーテン。

机につっぷす王子様。

自分だけの所有時間。

小さな幸せ。


かなうことのない恋。



わかっているはずなのに、あきらめきれない。


見つめていると、どうしようもないくらいうれしさと切なさがこみあげてきて。


それでも彼はゆっくりと寝息をたてるだけ。